蜜月
灯りを落とした部屋に荒々しい息づかいが満ちている。
今日何度目かのその行為に逃れようと体を動かせば、そのまま引き寄せられ、さきほどよりも深く繋がる羽目になった。
「……ぁっ……」
「……………」
「んっ………もっ…」
霞がかった瞳で春華を見るけれども。
白い膜を張ったような視界では春華がどのような表情をしているのかまでは分からず。
それに例え見えていたとしても、快感に思考が溶けてしまっている自分に認識できるとも思えない。
身体の内に熱い奔流を感じ取り、一度きつく瞳を閉じる。
「はる…か?」
やっと自分を翻弄する動きが止まり、力の入らない手で春華の服の袖を掴む。
そういえば服を着たままだった…とぼんやりする頭で思う。
「……っ」
そろりと触られた指の感触。
さっきまで体中を煽られていた自分にとってそれはかなりの刺激になるらしく。
とっさに声を噛み殺し損なって顔を背ける。
「…大丈夫か?」
「…大丈夫そうに見える?」
そう言えば、春華が困ったように微笑んだ。
「思わないな」
「……ばか春華」
そう呟いて、体ごと春華とは逆方向を向く。
何か言いたそうにしていた春華が、突然何を思ったのか何も着ていない自分の肩に口付けてくる。
「……っぁ……なに?」
これで終わりかと思ってたから、突然のその行動に一瞬声が裏返った。
「ねぇ…まだするの?」
「嫌か?」
春華の率直な言葉に首を振る。
嫌なわけなどない。
「………」
指先を春華の唇にと寄せれば、春華が指先にと舌を這わしてくる。
指先に感じる湿った感触。
ぴちゃりと卑わいな音をたてながら指先を舐めている春華の肩を掴む。
背筋に走る快感に背が仰け反る。
…そしてそのまま抱き寄せられ口付けられた。
舌の絡まる音に眉をひそめれば、なおさら煽るように絡まりが深くなる。
下肢にと伸びる手を止めようと指先を伸ばすと、指を絡まれ押さえ込まれる。
一番敏感な場所に触れられ、口を押さえようと手を口元に持っていった。
「……んっ」
「熱いな…」
「……んぅ」
「溢れてる」
くすりと笑う春華の声に、涙目で睨み付ければ…舌先がその涙を拭う。
そのまま激しく煽られれば、快感で意識が白く染まる。
「あぁ…っ!!」
自分の蜜で汚れた手に唇を寄せ舐めとっている春華に羞恥で真っ赤になった顔を向ければ、楽しそうに笑われた。
「勘太郎」
「……なに」
「自分だけ楽しむつもりじゃないよな?」
「………………………なっ」
馬鹿じゃないの?!
と言おうとした言葉を飲み込む。
だって。
獣みたいな餓えた眼差し。
「それは…しないけど…」
「あぁ…」
「わざわざ聞かないでよ…っ!」
「なぜ?お前の声でオレを求めて欲しいのに」
そう言って、口元だけで微笑んで。
餓えた眼差しはどんどんきつくなるばかり。
ぎゅっと瞳を閉じ、その瞳を見ないようにする。
「………」
「勘太郎?」
「……っ」
「……………?」
「わかったよ……」
「勘太郎?」
「してよ…春華でボクを満たして…!」
叫ぶようにそう言って、噛みつくように自分から口付ける。
さらに顔が熱くなるっているのが分かる。
すぐにきつく抱き締められ、さっきまで繋がっていた後ろにと指先がのびる感覚に体をすくめれば、なだめるように春華が肩口に口付けを施す。
「……気持ちいいか?」
耳元で囁かれるその声音は。
興奮しているのかすこし掠れ気味で。
「………っん」
何も答えないでいると、なかに埋められた指を乱暴に動かされる。淫らな音をたてて煽られるそこに、意識が集中してしまう。
白い綺麗な指先が…自分の中に、ある。
「……っ」
きつく内にある指を締め付けて、ぎりぎりと引き結んでいた口をなんとか開いて。
「いいよ…っ。気持ちいい…」
春華の肩に顔を埋め、耳元で囁いてやる。
その言葉に、春華が喉の奥で笑った。
「もっと淫らに誘ってみせろ」
「………っ」
「そしたらオレをやるよ…」
耳元に吹き込まれるその言葉に何度も首を振る。
「いいのか?このままでも」
感じるところばかりさすられて。
でも…イクこともできなくて。
涙が知らずこぼれ落ちる。
「いや…もうおかしくなる…!」
「なら…出来るだろ?勘太郎」
「……………っ」
良いように導されてるのはわかるけれども、それをはねのけることも出来なく。
「……春華」
春華の顔を包み込み、唇にと顔寄せ囁く。
「お願い…ボクを春華で満たして…何も考えなくさせて」
「………」
「もっと…ボクを求めて…ボクだけを見て…!」
春華に口付ければ、指先が引き抜かれ、ぐっと熱い感覚が内を満たす。
「………っぁ!」
首筋にチリっとした痛みを感じ、眉をしかめる。
「春華…」
「………なんだ?」
春華の首筋に唇を寄せ、同じように跡を付ける。
「気持ちいい…?」
自分の内にある春華をきつく包み込み、そう聞けば春華が微笑む。
「あぁ…」
「ボクで満たされてくれてる…?」
自分から春華の快感を煽るように動けば、春華もそれに同調し…快感を高めていく。
「お前だけだ…」
「春華…?」
「オレを満たしてくれるのは…」
「………ふぁ!」
一度きつく内部をさぐられ、背が仰け反る。
そのまま何度も深いところを抉られ、春華の背中にと腕を回す。
「……爪を立てても構わない」
「………っぁ」
ぎゅっと一段ときつく春華の背中にと爪を立ててしまう。
きっと明日になったらミミズ腫れになってしまっているだろう。
申し訳ない…という気持ちと、この生き物が自分の物だという確かな証に、心が揺れる。
「春華…」
「勘太郎…っ!」
切羽詰まった春華の声音が聞こえ、身体の内に暖かな温もりを感じた。
「っぁ…っ!!」
びくん!
と身体が震え…そんな自分の身体を春華が抱き留めてくれる。
そのまま少しの間抱き合っていれば。
「勘太郎、お前はオレにとって特別なんだ…」
春華が突然そう囁いた。
「………うん」
「忘れるなよ?」
“愛してる”のはお前だけだ。
耳元で何度も言われるその言葉に、微笑み頷いた………。
「ずっと一緒にいてね、春華」
朝、目覚めれば…愛おしい人は隣で寝ていて。
怠い体を起こしそっと唇に口付ければ、微笑みを浮かべる。
「愛してるよ、春華」
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2005.6/7 如月修羅
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