あぁ愛しき世界!!


「ねぇねぇシン、僕さ、考えたんだけど…」
「なんでありますか」
さっさと仕事をしてくれないかと持っていた書類から目もあげずに、上官のうきうきした声を受け流す。
いい加減サインを書いてくれないかな。
それが終われば俺、今日はもう終りなのに。
処理済として渡された書類をもう一度確認しつつ、今提出した書類に思いを馳せる。
あぁとっとと部屋に戻って寝てしまいたい。
「戦争がなかったら、シンと会えなかったんだよね」
「………っ」
うきうきした声のまま、キラがそう歌うように囁く。
ぎりっと無意識に握り締めた手からは血が流れる。
もう条件反射でキラを睨みつければ、そこにはうっとりしたように此方を見ているキラの姿があった。
「僕ね、戦争なんて嫌いなんだ、だいっ嫌い。最悪だよね嫌だよね」
ねぇシンもでしょう?
なんていつものにこにこ笑顔。
「…で、あんた何をいいたいんでありますか?」
「うん?だからね?戦争があったからこそこうやってシンと会えたんだよなーって思って」
「………………」
ぎりっと噛み締めた唇から血の味がする。
どこかしも血だらけで。
心が、悲鳴を上げる。
「あぁ、よかった!あの時事故に巻き込まれたからシンがここに居てくれるんだもんね。こうやって僕のこと見つめてくれるんだもんねあぁなんて素晴らしいんだろう!ねぇシン、素敵だね。
僕初めて戦争でよかったなって思ったよ、愛してるよ、シン」
「……………俺はあんたがだいっきらいですよ」
「うん、知ってる。だからもっともっと僕を憎んでね。そして僕だけのことを考えててね。それって愛されることよりもっと深く繋がってるってことなんだよ、大好き、シン愛してる」
ふわりと立ち上がったキラに引き寄せられる。



あぁ…駄目だ狂ってる。




憎いんだ、この人が。
殺してやりたいぐらい憎いんだ。




なぁ、なのにどうしてこの両手は血塗れのまま、キラの背中に手をまわしてなんかいるんだろう?




「殺してやりたいのに」




2009.11/16 如月修羅

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