りーん
りーん 風に揺られ、風鈴がなる。 季節の変わり目 「ヨーコちゃん、そろそろ風鈴片付けないとねー」 「あ、そうね!」 すっかり忘れてたわーとヨーコちゃんがぱたぱたと走ってきて、縁側に吊るされていた風鈴を持っていった。 もう、夏も終わり。 夏が終わって涼しくなるかと思えば、夏よりも暑くなってしまったような気がしないでもない。 日差しの所為だろうけれど。 だって吹く風はとても涼しい。 「勘太郎?」 「あ、春華」 ぼんやりと中庭を眺めていたら、春華が帰ってきた。 手には沢山の“贈り物”。 どうやらまた、タラシモードで色々貰ってきたのだろう。 「お帰りなさい」 「…?どうした、お前らしくもない」 「…なにが?」 ぼんやりとしたまま春華を見れば、春華が眉を顰めた。 「ぼんやりしてる」 「…んーなんというか…あれだね。夏もおわったなぁーと思って」 「…あぁ」 ふと春華の視線が風鈴のあった所に行き、そして再び僕の所に戻る。 「秋だな」 「秋だね」 「…それだけか」 「…………ふふ、それだけだよ」 いつまでもぼんやりしているわけにもいかないから、部屋にと戻ることにする。 踵を返したところで、春華が縁側に足をかけた。 「お前、季節はいつが好きだ?」 「…………いつだろうね?」 振り返って笑えば、春華が難しい顔をしていた。 「僕はどの季節も好きだよ」 「…でも、季節の変わり目は嫌いだろう」 「……………」 「すぐ、秋らしくなるさ」 春華はそう言い、台所の方にと消えていく。 今日の晩御飯は少し豪勢かもしれない。 ふっとそう思い…中庭と視線を走らせる。 夏が終り、秋が来て。 そして、変ることなく僕たちはここにいる。 「季節の変わり目も、そんなに嫌いじゃないんだよ」 春華が…ヨーコちゃんがいてくれるからね。 そっと呟き、その場を後にした。 戻 2009.9/12 如月修羅 |