大切はものは…

自分の人生で一番大切なものとは?
「一体なんでしょう‥‥?」
「お金とかは?」
「確かに大切かもしれないけどさ〜」
青空学校。
暖かい日溜まりの中で、レックスにと出された『お題』に真剣に頭を悩ます子供達に微笑みを漏らすレックス。
「‥‥はい、そこまで!この答えは宿題にするよ?」
「は〜い‥」
レックスの言葉に頷きながら、子供達がわらわらと歩き出す。
一通り後かたづけを済ませ、レックスも青空学校を後にした。



「何かしらねぇ…」
「難しかったかな?」
「そうねぇ…哲学的だわ。難しいわね」
スカーレルはそう言って微笑んだ。
やっぱりちょっと難しい質題だっただろうか。
「でも、きっと子供達はいい答えを見つけだしてくるわ」
「そうだよね」
「えぇ…」
スカーレルの言葉に、笑みを零す。

そうだ。

きっと子供達は良い答えを見つけてくれるだろう。
「スカーレルは?」
「え…?」
「人生で一番大切なモノ」
「そうね」
自分の言葉に首を傾げ、スカーレルが困ったように微笑んだ。
「きっと」
「え?」
「言ったらセンセ、驚くわ」
「ん?」
驚くような、大切なモノ。
分からなくて首を傾げれば、そっと唇に触れるスカーレルの指先。
「……センセはきっと仲間達、でしょう?」
「うん。俺はそう」


大切な。
大切な人達。
自分の命に替えても守りたいもの。

「アタシはね」
「うん」
「欲しいモノと大切なモノはいつも一緒なのよ」
「……?」
「我が儘なの」

そう言って。
こちらを見るスカーレルは。
ぞくりとするほど怖くて……どこか艶っぽい。

「スカーレル?」
少し、だけ。
少しだけ掠れた声音に、スカーレルが表情を緩める。
「傷つけてでも手に入れたいけど。でもアタシにはとても大切なモノだから壊したくないの」
「………」
「見守っていたいのよ」
「………スカーレル」
ぐっとスカーレルを引き寄せる。
どこか泣きそうな雰囲気を漂わせていたからだ。
「センセ…」
「馬鹿だなぁ……スカーレルは」
ぽつりと呟く。
「いつも他人のことばっかり心配して」
「……………」
「少しは自分も大切にしないと!スカーレルが俺に教えてくれたんだよ?自分自身も大切にしなくちゃいけないって」
「そうね」
ぎゅっと背中に腕を回され、耳元で頷かれる。
「そうね」
「そうだよ」
「……………大切なのよ、アタシは」
「うん」
「レックス、あなたが」
「………知ってるよ」
そう言えば、スカーレルが驚いたように覗き込んでくる。
「驚いたの、俺じゃなくてスカーレルだね」
笑いながら言い、そっとスカーレルの唇にと指先を触れさせる。
「俺は大丈夫だから」
「……レックス」
「我が儘で、いいんじゃない?」
「……そうかしら?」
「少しぐらい、我が儘でも良いと思う」
「じゃぁ、我が儘でいようかな」
「……うん。いいよ」

どちらからともなく。
引き寄せられるように口付けを交わした。


2014.10/11 如月修羅 再録


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