笑っていれば、どうとでもなるから。
喧嘩になることもないし。ただ、飽きられるだけ。
なら、笑ってる方がいいじゃん?
微笑み
「君はバカか?!」
「ごめんってば〜ネス」
「毎回毎回それは聞き飽きた!!」
これからの戦闘を少しでも楽にするために‥と、夜、人気のないところでネスとふたりで召喚を行っていた俺は、今日何度目かの失敗を犯した。
ははっ、と乾いた笑いをこぼすとネスが呆れたように溜め息つく。
‥‥ほらね?
笑っていれば、誰も傷つくことなんてない。
ネスはなんだかんだ言っても、俺がこうやって笑えばそれ以上怒鳴らないし。
バルも、アメルも。
みんな。
‥‥昔からそうだった。何をしても、何を言っても文句を言われるなら、始めから何もしなければいい。何も言わなければいい。誰も信用せず、ただただ笑っていればそれで良いから。
だから俺は笑う。
それが身を守るすべ、だろう?
「君はまた笑うんだな」
「えっ?」
「昔からそうだ。君も人とかかわることをしていない」
「‥‥何言って?」
「違うな。違う。‥‥君は誰も信用していないんだ」
黒いサモナイ石を取り出しつつ、ネスがそう呟いた。
「うわべだけの笑みを浮かべて、他人を欺いている」
違うか?
と笑って言われ、とっさに何も言い返せなかった。
でも。
「ネスはどうなんだよ?」
「僕か?」
俺の言葉に、ネスが首を傾げた。
「僕は君より世間を欺くすべが上手くない。それは‥‥君がよく分かっているだろう?」
「‥‥‥‥」
「‥‥マグナ?」
「‥‥‥‥だったら、何だって言うんだよ?ネス」
持っていた紫のサモナイ石をネスにとぶつける。
一体、何を言いたいのだろう?この兄弟子は。
「‥‥‥君は僕が嫌いだろう?」
さらりと言われた内容は。
そっくりそのまま相手に返してやりたいもので。
「それは、ネス‥‥‥だろう?」
「そうかもな」
あっさりと頷かれたから。
「なん‥‥で」
「別に?それよりもマグナ、サモナイ石は大事にしろ」
さっき俺がぶつけたサモナイ石を拾い、ネスが立ちつくす俺にと無理矢理握らせる。
自然と近くなる、ネスの整った顔。
ふっとネスが笑い、口付けてくる。
「君のことが嫌いだよ?マグナ」
愛を囁くように甘い声でそう言って、ゆっくりと離れる。
「俺もネスのこと、嫌いだから」
「そうか。気が合うな」
ゆっくりと笑う。
そうだ。
それがいつもの俺なんだから。
笑って。
ただ笑っていれば、それでいい。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥本当に?
2016.3/18 再録 如月修羅
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