IF 2 覚えていたかった。 この体温を。 掌に包み込んだ腕にと唇を寄せる。 肌に触れる前に後ろ髪を掴まれ、仰向けられた。 「ギギナ…」 呼んだ名は掠れ。 ギギナの肩越しに見える月はやはり大きく白く輝いて。 ……俺たちを照らし出す。 いつもと変わらないギギナと。 いつもと変わってしまった俺を…平等に月は照らし、その罪を…罰を暴こうとする。 カタカタと震える指先。 「………っ」 その指先をギギナの指先が力強く掴む。 普段なら悲鳴を上げそうなくらい力は強く。 今はただ静かにその強さを受け止める。 タスケテクレ そんな言葉は無意味なことぐらい知っている。 肌をたどっていくギギナの指先に体を預け、小さく息を吐いた。 その吐息はどこか…甘く。 そして…沸き起こる衝動。 オ前ノ血ガ欲シイ 喉が渇く。 煽られるままに体をのけぞらせながら、無意識にギギナの首筋に顔を寄せる。 それに気付いたギギナが哂った。 「飲みたいのか」 その言葉にはっとする。 ダメだ。 俺がギギナの血を飲んでしまったら…。 「お前の血は不味そうだ」 はっ! と掠れた声で笑い、ギギナの首筋から顔を離す。 あぁ…この渇きを潤せたらいいのに。 喉が焼けるように熱い。 違う、 この熱さはギギナの。 混乱する思考。 体のうちにギギナを受け止め、荒々しく抱かれながらとめどなく考える。 熱さ。 乾き。 痛み。 恐怖。 そして、 この体を抱く者は何一つ変わってはいないと言う安心感。 熱いギギナの腕に抱かれ夢を見る。 それは…本当に。 短い、夢で。 途方もなく優しかった。 ………………目を覚ませば、もう夜明けがまじかで。 最後まで、ギギナのことを噛まずによかったと安堵する自分と。 残されたこいつはどうするんだろう…だなんて考えてる自分と。 最期まで俺らしい馬鹿らしい思考で笑いが毀れる。 「ギギナ」 「応」 「ここを、刺せ」 笑って心臓を指差す。 それにとギギナがゆっくりとネレトーを持ち、そして微笑んだ。 「馬鹿らしい最期だな」 「あぁ本当に」 でも、なぜだろう…。 静かな、静かな気持ちで最期を迎えられるなんて。 馬鹿らしい最期だけれども、最期をお前に看取ってもらえるなんて俺は幸せだ。 なんて口になんかしてやらない。 ごめんな。 お前を見取ってくれる奴…誰か、探してくれよ? 本当に最期まで、馬鹿らしい思考。 最期に見た顔がお前の笑顔で嬉しかった、なんて恥ずかしいから…地獄で会ったとしても言えやしない。 最初に逝ってまっててやるから。 それだけは言おうかな…なんて思ってやめた。 お前にはそれすらも必要ないだろう。 朝日が昇り、腕の中で息絶えたイトオシイモノだった体が塵にと還る。 さらさらと風に乗り、自然にと還るその光景を見つめ…。 地面に突き刺さったままのネレトーを掴み立ち上がる。 「ガユス…」 血に染まったネレトーを振り上げ…そして、 戻 |