非日常だって恋をする。
「…あれ?」 珍しく、田中太郎の文字が見つからない。 風邪とか引いたわけじゃないし、今日は予定もなにもはいってなかったはずだけど。 すでに毎日の日課とかした、帝人君のスケジュールを思い出しながら首をかしげる。 まぁもう少し待てばくるかな? あぁ…もうマイルとクルリ、お前達いいかげんにしろよ? カチカチとキーボードを打ち込み、二人を追い出しに掛かりながらもう一度時計を見る。 明らかに、いつもなら顔を出してるはずだ。 「珍しいこともあるんだねぇ…」 ちらりと見た時計は夜の十時。 うん、まだ起きてるはず。 携帯に切り替えて、そのまま外に出た。 チャイムを鳴らせば、何か倒れる音と共に、焦った声が。 「ちょ…わっ、待ってくださいね!」 というか、夜の10時過ぎのチャイムに出るなんて危機感まったくないんだろうか、この子。 「すみませ……」 「こんばんは」 にっこりと微笑めば、ぽかんとした表情の帝人君。 あ、写メとればよかった。可愛かったのに。 「お邪魔しちゃった?」 「いえ、寝ようと思ってただけですから…ってなんでここに?!」 とりあえず入ってください!とドアを開けて迎え入れてくれる。 本当疑うことを知らない子だなぁ…。 危なくない? あとで教えておいた方がいいかな。 「なんで…って、チャットにきてなかったから」 「…それだけ、ですか?」 「うん、それだけ。あ、一応倒れてるかもしれないなーって思って」 「あー…」 コーヒーでいいですか?とそのまま台所に行く帝人君に声を掛ければ、困ったような声をだした。 「すみません、そう…ですよね。そうですよね、心配かけさせちゃったみたいで…」 「いや、こっちこそごめんね?突然」 立ち上がった拍子にどうやらコップを倒してしまったらしく、ノートパソコンの周りが僅かに濡れている。 機械に水はやばいだろうと、近くにあった布巾を勝手に拝借。 そのままかるく拭いておく。 「あ、帝人君。パソコンにも掛かってるかもしれないから、あけさせてもらうよ?」 「すみません、お願いしま………」 あけた瞬間、目に飛び込んできたのは自分の写真。 ぶれてることから、偶然写りこんだのは明白で。 それにしたってなんだってまた。 そこまで思った瞬間に、凄い勢いで飛び込んできた帝人君がノートパソコン自体を持ち上げた。 顔が凄く真っ赤だ。 「これはその…なんというか!その、たまたま写ったっていうか!悪用とかしてなんで…!」 「まぁ悪用されようとされまいと、その迷彩度じゃ握りつぶすのだって簡単だしなんとも思わないけど…」 「あぁぁぁしてませんしてませんから!」 「いや、うん、してないのは分かるけど、とりあえず落ち着いて、そのパソコン置いたら?」 帝人君は本当に純粋な子だ。 可愛い。 あわあわととりあえず布団にノートパソコンを置いている。 「それで濡れてなかった?」 「ぬ、濡れてないです…!」 「本当?」 もしかしたら、もしかするかも。 淡い期待を胸に抱きながら、帝人君の傍による。 狭い部屋だから、すぐに距離が縮まる。 なんだか沸騰してるように顔が真っ赤な帝人君。 俺の写真をパソコンに取り込んで、一体何を思っていたのやら。 「ねぇ帝人君?」 「…な、なんでしょう?」 「俺の写真どうするつもりだった?」 「ど、うもしないです」 「本当に?」 信用ならないなーなんていいながら、じりじりと近づけば、どんどん追い詰められて、最後には壁にぶつかって。 「…?!」 「出演料もらってもいいよねー♪」 口付ければ、真っ赤になった帝人君がこれ以上もなく大きく瞳を見開いて。 「ね、俺も帝人君の写真欲しいな」 「それはどういう…」 「うん?大好きだから、俺も飾りたいなって思って」 「………っぇ」 「大好きだよ、帝人君」 信じられません! と声をあげた帝人君を押さえつけて、もう一度口付ける。 「じゃ、分かるまで何度もシテあげる」 持久戦は、得意なんだよね。 戻 だがよく考えるとこれ臨也さんストーカー疑惑で、ハッピーエンドちがくね? ってお話だった。 2010.5/6 如月修羅 |