貴方が創ってくれる世界

マスターが教えてくれた言葉が俺を作る
俺には必要最低限の物しか、インストールされていなくて。
…世界は、マスターによって創られる。

「〜〜〜〜〜♪」
「今日はここまででいいぜ、カイト」
ふぅ…息をつき、マスターがヘッドフォンを外す。
ヘッドフォンが触れた所為で、さらりと茶色い綺麗な髪が揺れた。
じーっとその様を見つめていれば、マスターが首を傾げた。
「どうした?カイト」
「…マスターは、うた、すきですか?」
「あぁ、嫌いじゃないな」
「あの…じゃぁ…俺のこと…は?」
「カイト?」
立ち上がったマスターが、ぼんやりとたっていた俺の元にと来る。
そのままひょいっと手を掴まれ抱き寄せられた。
「………?」
「なんだ?寂しそうにみえたんだがな」
「さびしい、ですか…?」
「俺にはそうみえたんだ」
「………さびしい」
じっと胸に手をやる。
勿論、そんなことをしても俺の今の感情を理解することは出来ないのだけれど。
「………マスターは、俺みたいな旧型でいいんですか…?」
この間ニュースで新しい弟が出来たと言っていた。
さらにリンとレンもバージョンアップするらしいし、他にもボーカロイドたちは出てくる。
出始めならまだしも、こんな時季にわざわざ俺を買う理由が分からない。
「俺は、お前が…お前だけが良かったんだよ、カイト」
「…………」
「カイトだけがいいんだ、俺は」
にこっとマスターが笑い、頭を撫でてくれる。
ほわんと胸が温かくなる。
これは、嬉しい、幸せということなんだとマスターが教えてくれた。
「そういってもらえて、俺は嬉しいです」
「…あぁ、だからカイト」
「…はい?」
「次、そういうこと言ったらお仕置きだからな?」
「…………おしおき」
新しい言葉に首を傾げれば、にこにことマスターが笑う。
「カイトは俺だけを見て俺だけを考えてればいいってこと。他の奴のことを考えたり…口に出したりしたら…」
「………?」
「そうだな、監禁はしてるようなものだからなぁ…どうしようかな。痛いことしちゃうかもね」
「??」
「カイトにはまだ難しいかな…?ま、お前は今のままで…まだいいよ」
「はい、マスター」

俺の世界は、マスターによって創られる。
マスターがいいように。
マスターのためだけに。


たとえ、それが常軌を逸していようと俺には何一つわからない。


世界は、マスターによって創られる。



2009.9/12 再 如月修羅

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