01 髪を梳く (ギギガユ)
 さらさらと髪を梳く。
 珍しいことに、ギギナは目を覚まさない。
 思った以上に柔らかなその髪の感触に笑みを零した。
 「綺麗な髪だな…」
 ほわんと知らず笑みが毀れる。もちろん、本人に言ってやる義理はない。
 寧ろ言ったが最後、どんな仕打ちが待ってるか想像も付かない。
 さらさら。
 さらさら。
 指先から毀れ落ちる髪を引き寄せ、そっと口付けた。

 「俺以外に触らせたら、本当に殺してやるから」
 
02 口付けを落とす (お好きなCPでどうぞ/笑)
 額にと口付けを落とす。次は瞼。次は…頬。
 頬を辿れば、うっすらと開いた唇にと自然と口付けを落とす。
 それはまるで何かの儀式のようで。
 毎夜毎夜、飽きずに繰り返す。
 お互いを見つめる瞳に熱が篭もる。
 …また、口付けを落とした。

03 指を絡ませる(春勘)
  細い白い指先。
 さらさらと原稿を書いている指先を見つめそう思った。
 そっとその白い指先に手を伸ばせば、気が付いた勘太郎が微笑む。
 「どうしたの?」
 「細いな」
 指を絡ませれば、勘太郎がくすぐったげに笑う。
 「なに?子供みたいに」
 「たまにはいいだろう」
 絡ませた指先からは、暖かな、温もり。

04 傷の舐め合い(ギギガユ)
 こうやって傍に居るのは、傷の舐めあいなんじゃないかと時に思う。
 俺たちにだって、“楽しかった”といえる事務所時代があったのだから。
 …否。
 傷の舐めないそのものだろう。
 口元に浮かぶ笑みに苦い思いを覚えつつ、そっと瞳を閉じた。

05 背中合わせ(ギギガユ)
 赤い血が舞う。
 白い刃が月の光に反射するのを目を細めながら見つめ、小さく溜息つく。
 背中越しの相棒の背中は熱い。
 全てが冷たく冷え切り非現実を醸し出す戦場の中で、相棒の背中の熱だけが唯一現実を思い出させる。
 「さっさっと終わりにして、オレはジヴとデートの続きをするからとっとと後ろのクソドラッケン、敵さん倒してくれる?」
 「この状況で他人に頼るとは流石軟弱眼鏡だな」
 いつもより言葉数の少ない悪態を吐きつつ、咒式を展開する。
 あぁ…お願いだから気付かないでくれ。
 お前の熱に、まだ自分は戦場の狂気に囚われていないと安堵していることを。
 気付かれてしまったその時は。
 背中越しにお前を刺そう。

06 暴露(頼勘)
 大体あんたが鬼喰いごときで満足できるとでも?
 うるさいな、源は。そういう源だって、一人寝出来るほどの子供だとでも言うつもり?
 …………言わないけどさ。
 だったら黙ってなよ。しょせんお前とボクは同じ穴の狢なんだから。
 でも鬼喰いの前ではあんたは淑女を演じるわけだ。
 健気デショ。そういうお前だって渡辺かエドワーズさんの前では違う自分を演じるくせに。
 そうだよ。僕はあんたの前でだけ素の自分で居られるんだから。
 そ。でもボクはお前の前ですら自分を演じているけどね。
 …いつかその化けの皮、剥がしてやりたいな?
 「一ノ宮先生、お久しぶりですね」
 「あぁ、本当だね。あやめちゃんも元気かい?」
 「えぇ!一ノ宮先生もお元気そうで…」
 にこやかに喋る裏側では、腹の探り合い。

07 頬に触れる(ギギガユ)
 乾いた指先が頬に触れる。
 普段、この指先がネレトーを持ち敵を倒すのだ。
 この指先の感触を、一体何人女が知っているのだろう?
 この指先が紡ぎだす、色々な動作を何人の女が知っているのだろう…。
 取り留めなく考えている最中でも、頬を辿る指先は止まらない。
 ただ、一つ言える事は。
 こうやって眠っているときにしか触らないこいつの指先の感触は、己だけが知っているということ。

08 秘められた関係(頼勘)
 「会いたかったよ、頼光」
 「僕もだよ、先生」
 ぎゅっと回された腕に笑みを零す勘太郎。
 「なんていうと思った?馬鹿源頼光」
 「知ってるよ。先生がそんなこと言わないってことぐらい」
 「お前がボクのことを“先生”じゃなく名前で呼んだら、そのうち考えてやるけどね」
 「あ〜ぁ。いつになるのかなぁ…あんたが僕なしじゃ生きられなくなるぐらい狂ってくれるのは」
 「少なくとも堂々とお前と会えるようになってからだね」
 「じゃぁ、さっさと鬼喰いを殺そう」
 「その前にお前を殺してやるよ」
 「そう言ってられるのは今のうちだよ?先生」
 「望む所だよ、源」

09 庇う(春勘)
 「勘太郎!!」
 血が舞う。
 「………春華」
 目の前に血が舞っていた。
 「春華!!」
 強くなる。
 強くなるから…。
 「春華!!」
 春華の肩越しに見えた敵の姿に、瞳を細めた。
 
10 追い詰める(ギギガユ)
 ―…逃がしなぞしない。
 耳元で愛の睦言のように囁かれる。
 ―…じゃぁ、早く捕まえて見せろ。
 そう笑えば、あいつも笑う。
 ―…今はまだ遊ばせてやっているだけだ。
 さらりと耳元の髪を掻き上げられ、口づけられる。チクリとした痛み。
 ―…追いつめて…手に入れた方が、私が楽しめる。
 ―…悪趣味な男だな
 ―…良い趣味だと思うが?
 うるさい唇に噛みつき、黙らせた。
 
11 生む(イムガユ)
 それは大切なモノだった。
 亡き妻との大事な約束。唯一残された、絆。守るべきもの。
 「汝を信じても良いのか?」
 それなのに、人間の言葉になぞ心動かされるとは。
 赤い髪の美しい人間。
 胸に沸き起こる、懐かしい感情。人間相手に生まれることなぞないはずの。
 「信じても…」
 ふわりと微笑んだ赤髪の人間に、胸が高鳴った。

12 後ろから抱き締める(春勘)
 力強い腕だ…と思う。握りつぶされるかもしれない。
 だって春華は妖怪で。でもボクは人間で…。
 そんなことを考えてしまう自分が嫌い。
 「好きだよ、春華」
 「知ってる」
 春華が肩口に顔を埋め、そう呟く。首筋に掛かる息がくすぐったい。
 「大丈夫だ、オレはお前を壊したりはしない」
 「…!!」
 「優しく、してやる」
 ぼそりと呟かれた言葉に、泣きそうになりながらも微笑んだ。
 
13 手を伸ばす(ガユス)
 どれだけ伸ばしても、手になど入らない。
 そんなことは知っている。
 それでも俺は手を伸ばし続けるのだろう。
 ギギナに愚かだと笑われながらも、それでは俺は手を伸ばし続ける。
 いつの日か、罪は許されて…この手に掴み取るときはくるのだろうか?

14 ──越しに触れる(遊郭 春勘←頼)
 鮮やかな色彩。鈴を転がすような声。赤い瞳。細い白い指先。
 何もかもがあの楼主のもの。
 あぁ…いっそのこと楼主を殺してしまおうか。
 そっと格子にと指先を触れる。
 この向こうにはあの人が舞を舞っている。
 「殺してしまおうか」

15 撃ち抜く(ギギガユ)
  大丈夫。
 外しなどしない。一発で沈める。
 何度も何度もシュミレーションを重ねた。
 苦しめないで、ヒトオモイでコロシテあげる。
 だから安心しろよ、ギギナ。
 背を向けたつギギナに微笑を浮かべ、ヨルガを向けた。

16 共犯、共謀(ガユ独白)
 あの日…あの時、俺たちは別に離別してもよかった。
 だって、もう…あの陽だまりの場所はないのだから。
 ………“壊れて”しまった。
 なのに。
 今もまだこうして共に歩いている。共に歩き続ければ増えていく罪。
 お互い何も言わない…その関係はまるで共犯者。

17 前世からの付き合い (勘太郎)
  会いたいとは思ってた。
  会いたくないとも思ってた。
  だって、君たちの人生だもの。ボクに囚われるなんて可笑しいでしょ?
  君たちは、君たちの考えで生きていていいんだよ。
                                             「またあえたね」

18 サイン(ギギとガユ)
 それは合図。
 言葉にしたらいけない。
 気付かれないように、そっと。静かに…でも確実に。
 エモノをシトメよう。
 「また、戦闘…か」

19 抱き合う(春勘)
 暖かな温もり。
 大好き。
 大好きだよ、春華。
 ず〜と、一緒に居ようね?
 
 背中に回した腕に力を込めた。

20 シーツにくるまる(春猫勘)
 ころんと横になれば、暖かな太陽の匂い。
 自然と尻尾が揺れる。
 「はるかしゃんも一緒に寝よ?」
 ぱたぱたと尻尾でシーツを叩けば、春華がにこりと微笑み隣にと来た。
 「気持ちいいね♪」
 「あぁ…」
 二人でシーツにくるまれば、さっきよりももっと暖かくなった。

21 殺す(ギギガユ)
 「殺す殺す殺す殺す!!今日こそ、その顔と胴体を二つに裂いてやる!!」
 「ふん、軟弱眼鏡が出来るものか」
 「黙れ黙れ!!いい加減、その粗大ゴミたちをどうにかしろ!」
 「お前はこの美しい曲線…」
 「そ・れ・は・き・き・あ・き・た!!」
 「ふぅ…こんなに美しい者たちが分からないお前の存在自体が分からんな」
 「俺はお前の存在自体がわかんねぇよ。…………もういい、この粗大ゴミたちを解体してやる」
 「!!」
 「されたくなかったら、いますぐこいつをもとあった場所に返して来い」
 「…………………わかった。そのかわり今日は貴様をベットの上でコロシテやろう」
 「?!」

22 ラインを辿る(遊郭 春勘)
 「んっ…春華…?」
 仕事も終わり、先に眠っていれば。
 春華がいつの間にか…一緒の布団で寝ていた。
 「…起こしたか。悪い」
 「ううん…大丈夫。お仕事、お疲れ様…」
 笑いそういえば、春華の指先が唇のラインを辿る。
 「今日のお前の舞い…綺麗だった」
 「…っ」
 「勘太郎?」
 春華の指先がボクの体のラインを辿る。
 「春華の腕の中でも舞ってあげるよ…?」
 いつだって、ボクは貴方のモノなのだから。

23 騙す (イーギーいじめ)
 「今日も良い天気ね」
 「あぁ…そうだな、なぁ?イーギー!」
 「うっせぇクソ眼鏡!さ…」
 「さ?」
 にやりと笑う俺にイーギーがぎくりと動きを止める。隣に座っているジャベイラが大きく溜め息ついた。
 「イーギー?」
 「さ…さ…」
 「………………」
 「やっぱり俺にはできねぇっ!!」
 頭を抱え唸りだしたイーギーを、勝利の美酒を煽りながら見つめる。
 何てことはない、時間つぶしの小さな騙し合いゲームだ。
 全部正反対のことをソレらしく言う。ただのお遊び。
 それなのに…あまりにも長時間続くこのゲームに、イーギーの精神は耐え切れなくなったようだ。
 「本当、イーギーは扱いやすいのう…」
 ジャベイラの呟きは、幸い俺の耳にしか届かなかったようだ。

24 忠誠を誓う 春勘(クリスマスネタ)
 神に誓うことなどできはしない。
 神を祝うだなんてできるわけがない。
 「春華」
 例えそれが異国の神だろうと、地の底に属する己に、天の者を祝福することなどできる訳がないだろう。
 「オレは…祝えない、誓えない」
 「うん」
 「だからお前に誓おう、お前を祝おう」
 「…!」
 「それで、いいか?」
 「勿論ですとも」
 勘太郎の嬉しそうなその笑みが、己にとって確かな物。

25 腕を組む(春勘)
 寒いと言えば、春華が馬鹿にしたように此方を見る。
 なに、その目は〜!!と食って掛かれば、鼻で笑う。
 なにそれ?!それがご主人様に対する態度?!
 「手でも繋ぐか?」
 「!」
 「あいにく、これしか思いつかない」
 「そんなんじゃ…生易しいなぁ〜」
 と、飛びつくように腕に抱きつけば…春華が笑った。
 子供のような行動を、許してくれる貴方が好き。

26 告白(ギギガユ)
 「ガユスよ」
 「なんだ」
 「たまには正直に告白しよう」
 「気味悪いな」
 「子供が増えた」
 「………………」
 「お前との子だ」
 「今すぐソレをもといた場所に返して来い?そしてとっととその息を止めて潔く死ね」
 「お前との子というところに突っ込まないのか、ガユスよ」
 「……っ?!」
 「良い心がけだな」

27 許す(ギギガユ)
 「貴様には許すと言う概念がないのか?」
 「それをお前の口から聞くのに俺は吃驚だ」
 「毎回毎回貴様は口を開けば、壊れたカセットにも劣る騒音ばかり喋る」
 「あはは。お前は俺の正論をそんな風に思っていたわけだ?どうりで話が前に進まないわけだな」
 「ガユスよ」
 「ギギナ、はっきり言わせてもらう。てめぇがてめぇである限り、俺は一生お前の存在自体何もかも!!許しはしないぞ♪」
 「騒音だな」
 「ギーギーナー?」
 以下、永遠に続く。
 
28 寄り添う(春勘)
 夕方、縁側に座ってぼ〜としていると、春華が散歩から帰ってきたのか…顔を覗かせた。
 「お帰り、春華」
 ヨーコちゃんは今買い物だよ、と教えれば…春華が納得したように頷いた。
 この時間にボクが一人でいることが珍しかったからだろう。
 「隣、座る?」
 「そうだな…」
 「せっかくだから、お話して」
 「なにの?」
 「外で何してきたか」
 「あぁ…」
 春華が頷き、ゆっくりと口を開いた。

29 押し倒す(ギギガユ)
「ふざけるな、ギギナ」
「私はふざけてなどおらぬ」
「余計たちわるいわっ」
バタバタと暴れるガユスをらくらくと押さえつけ、ギギナが笑う。
「エモノは活きがいいのに限るからな」
思う存分暴れろと、耳元で囁く男を睨み付ければ…美しい剣舞士が微笑みを浮かべた。
あぁ畜生。
この笑顔には勝てない。
「たまには優しくしろ」
「気が向いたらな」
そういう唇に噛み付いてやった。

30 終幕(お好きなCPで/笑)

暗闇。
全てはここから生まれ、ここに戻る。

怖くはない。

貴方が居れば。
貴方と居れば。

最後まで。

最初から最後まで、そしてその果てまでも…貴方と共にいこう。
共に、どこまでも。




2009.10/25 如月修羅 再録

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